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色彩用語解説

色彩を科学的に語る時によく使われる言葉を色彩用語解説としてまとめました。

暗順応[あんじゅんのう]
dark adaptation
視覚系が暗い場(0.03cd/m2以下)に対して順応している状態を指す。かん状体だけが働いているため、明暗の判別はできるが、色の判別ができない。眼は暗さになれると弱い光でも見えてくるが、明るい所から暗い部屋に入った場合、暗順応するまでに30分以上かかる。
暗所視[あんしょし]
scotopic vision
正常な目で暗順応状態で視覚が働いている時の見え方で、かん状体だけが働いており、色の判別はできないが、光に対する感度は明るい場所の数万倍から10数万倍に高まる。
色温度[いろおんど]
color temperature
光源の光の色を表わす時に温度を用いる。単位はK(ケルビン)。光源の色は赤っぽいものから青白いものまであるが、温度を上げるに従い色が変る完全放射体(黒体)と呼ばれる架空の物体の色をその時の絶対温度を用いて表わす表記法。溶鉱炉中の温度は色度を計って温度に換算される。
色空間[いろくうかん]
color space
すべての色を系統的に配列して幾何的に表示すると三次元の空間となる。例えば、色相・明度・彩度や R・G・Bなど3軸によって構成される空間である。円柱座標系や直交座標系など形は一定していない。
色再現[いろさいげん]
color reproduction
写真、印刷、コピー、ディスプレイなどで元の色を再現すること。元の色を分光分布まで正確に再現することは難しいので、通常は色の見えだけを正確に再現している。カラー写真の場合はシアン・マゼンタ・イエロー染料の重さね合わせによる減法混色、印刷やカラーコピーはこの3色の顔料にブラックを加えた減法混色と並置混色、テレビは赤・緑・青の光の加法混色で色再現が行われる。
色順応[いろじゅんのう]
chromatic adaptation
明順応状態で視覚系が視野に入る色に順応する過程や順応した状態を指す。例えば昼光色蛍光灯照明から白熱電球照明に切り変えた場合、一瞬、黄色っぽく感じるが、数分後には白熱光に順応して黄色っぽさを意識しなくなる。目の方が照明光に慣れて自動的に視覚系内で補正作用が起る。
色分解[いろぶんかい]
color separation
多色印刷の製版工程で、元の色画像から二つ以上の原色について明暗を表わす画像を作ること。プロセス印刷では写真的には赤・緑・青のカラーフィルターによってシアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの4色版に分解される。現在ではスキャナーによる電子的な分解法が主流になっている。
色立体[いろりったい]
color solid
手にとることができる物体の色は、固有の色の他に染料や顔料で着色されているが、色空間の中では限られた領域内に存在する。特定の表色系においてその色空間のシステムに応じて三次元の形で系統的に並べたものを色立体という。マンセル表色系の色立体は白から黒の無彩色を中心軸とし、色相を円周に沿って並べ明度を垂直方向に、彩度を水平方向に配置して色立体化されている。色空間の概念を理解するのに有効な教材である。
インターカラー
Intercolor
国際流行色委員会の呼称であり、この委員会で年に2回、選定し発表される国際流行色。この委員会は1963年に組織され、現在15カ国が参加している。日本の代表団体は一般社団法人 日本流行色協会(JAFCA)。
演色性[えんしょくせい]
color rendering properties
照明光が物体色の見え方に及ぼす影響のことで、光源は各々固有の特性をもっており、それを演色性という。演色性は平均演色評価数と特殊演色評価数で表わされるが、前者は100に近いほど標準の光に近い。蛍光灯のカタログには平均演色評価数が記載されているので、演色性が関係する場合は蛍光灯選択の参考にするとよい。
オストワルト表色系
Ostwald system
オストワルトが考案した表色系で、純色量、白色量、黒色量の3成分で表面色を表わす。オストワルトは純色(24色)と白と黒の3色の回転混色を使ってこの表色系を作成した。この表色系を色票集の形にしたものが「カラーハーモニー・マニュアル」であるが、絶版になりデザインツールとしての利用の道は阻まれている。
可読性[かどくせい]
legibility
色の可読性は文字、記号、図形などと地の色の組合せが、読み易さに関係してくるために研究される。図と地の色の対比効果の中でも明度対比が最も大きく作用し、明度対比が大きい程可読性は良くなる。測定方法には読みとれる距離、時間、照度あるいは可読可能な最小の大きさを測るなどの方法がある。
加法混色[かほうこんしょく]
additive mixture of color stimuli
ディスプレイに用いられている混色で、複数の色光を混色していろいろな色をつくる方法。網膜の同じ箇所に同時に、あるいは急速に交互に色の刺激を与えたり、目で分解できない微小点の集合として入射した時などに生じる混色である。一般に色光の混色の形式とされている。
かん状体
rods
網膜の中の視細胞のひとつで、主として暗い所で働き、明暗感覚だけに関係する。棒状の形をしているためにかん状体といわれる。かん状体に含まれている感光物質は視紅という。
慣用色名[かんようしきめい] 習慣的に使用されている色名。狭義には「JISZ8102 物体色の色名」に規定されている意味は「慣用的な呼び方で表した色名」。系統色名と対立する概念。 さんご色、桃色、あかね色などが慣用色名にあたる。
記憶色[きおくしょく]
memory color
身近にある物の色、色名に結びつけて記憶に留めている色のこと。実際の色と異なる理想的な色として記憶されていることが多い。例えば、日本人の肌色は実際よりやや赤みで明るく低彩度の色として記憶されていることが多い。これに対し「色記憶」は実物の色を抽象的に記憶する行為を指す。
北空昼光[きたぞらちゅうこう]
north sky light
表面色の色合わせをする際に用いる自然の昼光。日の出3時間後から日の入り3時間前までの間の直射を避けた北窓から入る天空光を指す。
輝度[きど]
luminance
光の強さを表わす測光量。単位はcd/m2(カンデラ毎平方メートル)を用いる。測定は輝度計で行う。輝度は光源の光の強さや、表面から反射される光の強さなど、光を出す側の量である。可視光線の放射量に人の光に対する感度である標準比視感度関数を掛けて導かれる心理物理量である。
均等色空間[きんとういろくうかん]
uniform color space
等しい大きさに知覚される色差が、色空間内で等しい距離に対応するように作られた空間を指す。工業製品の色彩管理のために必要とされる表色系で、L*a*b* 表色系やL*u*v* 表色系がUCS表色系とも呼ばれて用いられている。
グラスマンの法則 グラスマンにより見いだされた加法混色に関する四つの法則。第1法則は任意の色は互いに独立した3色の加法混色により等色できる。第2法則は3原色の内の1色の輝度を連続的に変化させると加法混色による色も連続的に変化する。そして、3原色の混合比が等しければ主波長と純度は同一である。第3法則は等色している色刺激は分光分布のいかんを問わず加法混色において同一の効果をもつ。これらから加法混色の加法則、減法則、比例則が導かれる。第4法則は加法混色で得られる色の輝度は原色の輝度の和に等しい。
グレースケール
grey scale
JISに定められた変退色や汚染の程度を判定するための無彩色スケール。いずれも2色の灰色色票を組み合わせて、5、4-5、4、3-4、3、2-3、2、1-2、1の9段階に評価できるようになっている。
系統色名[けいとうしきめい] 「JISZ8102 物体色の色名」に規定されている意味は「あらゆる色を系統的に分類して表現できるようにした色名」。慣用色名と対立する概念。基本になる色名に系統的な修飾語を組み合わせてつくる色名。さんご色は「明るい赤」、桃色は「くすんだ赤」、あかね色は「こい赤」と表現する。
減法混色[げんぽうこんしょく]
subtractive mixture
カラー写真は3色の染料層の重ね合わせによる色再現を行うが、色フィルターあるいは他の色吸収物質の重ね合わせによって別の色が生じる混色形式。カラーフィルターを用いた舞台照明や、印刷の刷り重ね面に表われる混色で、色の層を光が通過する都度、波長のある部分が吸収されて暗くなっていくことから減法混色といわれる。
光源色[こうげんしょく]
light-source color
光源から出る光の色を指す。光源色を表わす場合は通常、色刺激値(x,y)が用いられる。光源とは太陽光、ろうそく、アセチレン灯、ガス灯、炭素電球、タングステン電球、蛍光灯、水銀灯などと多岐にわたる他に、信号灯のようにランプとフィルターを組合せたものも該当する。
光電色彩計[こうでんしきさいけい]
photoelectric colorimeter
色を測定する方法は、分光測光器によって波長ごとの反射率を測定して三刺激値を計算して求める方法と、人の眼がもつ赤・緑・青に対する感度に近いカラーフィルターを備えた色彩計で三刺激値を光電的に直読する方法があり、後者の方法に用いられる色彩計を光電色彩計という。
黒体(完全放射体)[こくたい]
black perfect body
可視光の波長の放射をすべて吸収してしまう物体で、同じ温度の物体としては最大の熱放射を行う理論上の物体をいう。色温度は黒体の絶対温度が熱放射時に発する色と相関することから、温度により色を表す方法である。黒体軌跡は、黒体の色が絶対温度とともに変化する状態を色度図上に描いた軌跡のこと。
彩度[さいど]
chroma
色の鮮やかさを表わす言葉。マンセル表色系のマンセルクロマがよく用いられのでマンセルクロマのことを彩度ということが多い。色の三属性のひとつで、数値が大きいほど鮮やかになる。Cの記号で表わすことができる。
三刺激値[さんしげきち]
tristimulus values
色彩学で最もよく用いられるのがXYZの三刺激値である。三色表色系において試料の色に等色させるために必要な原刺激の量を表わす言葉なのでRGBのような三刺激値もある。XYZは基本的には赤緑青の色光の強さを表わすがXとZとは明るさを持たない赤と青であり明るさはY値のみに持たせている抽象的な3原色である。
残像[ざんぞう]
after image
残像には正の残像と負の残像があり、映画などに利用されて動画として見えるのが正の残像であり、強い光や色を見た後に網膜に残る反対色の視知感覚を負の残像という。白の図形を見た後に黒の図形が残る明るさの残像の他に、赤に対する青緑や黄に対する紫の残像のように補色関係で残像が生じる。原因は視細胞が特定の色に対し感度の補正を行った結果として生じる。
CIE表色系 CIE 1931
standard colorimetric system
CIEとは国際照明委員会のこと。CIEが1931年に採択した等色関数にもとづく三色表色系であるXYZ表色系のこと。これは2度視野の色を対象としているが、他に1964年にCIEが採択した10度視野の色を対象とするX10Y10Z10表色系がある。いずれも色の測定の基礎になる表色系である。
色差[しきさ]
color difference
二つの色の違いを定量的に表わす場合に色差という表現をする。色差は均等色空間中の2点間の距離で表わされる。工業製品の色の管理に用いられることが多く、刺激値直読型の色彩色差計か、分光光度計を使って測定される。日本では現在L*a*b*(エルスター・エースター・ビースター)色差が最もよく使われている。
刺激値直読型色彩計
photoelectric tristimulus colorimeter
三刺激値を直接測定するタイプの色彩計。光電色彩計とも呼ばれ、光電検出器の受光部に等色関数に近い分光応答度をもつフィルターを組み合わせた色彩計で、色彩管理などの現場でよく使用されている。
色彩恒常[しきさいこうじょう]
color constancy
照明や見る条件が異なっても、主観的には物の色があまり変化して見えない現象をいう。照明の色が変っても、見慣れた物の色は記憶による補正作用が起ると考えられている。
色相[しきそう]
hue
色合いを表わす言葉。マンセル表色系における色相をマンセルヒューというが、色相あるいはhueを単独で用いる場合でも、マンセル系のものとして用いることが多い。マンセルヒューはR、YR、Y、GY、G、BG、B、PB、P、RPの10色相のそれぞれに0~10の数字を組合わせて表示される。色相を円形に並べたものを色相環あるいは色環と呼ぶ。
色度[しきど]
chromaticity
ある色から明るさの成分だけを除いたものを色度という。xy色度図上の一点は、x値とy値の組合わせによるか、主波長と純度の組合わせで表現される。色刺激の心理物理的な性質を表わしている。
視認性[しにんせい]
visibility
視認性とは対象物の存在あるいは見えやすさの程度を示す言葉であるが、その程度は色によって異なることから色の視認性と表現される。交通信号などのようにあらかじめその対象の存在が予測されている場合の見えやすさを表わす。存在が予測されていない場合は誘目性という言葉を使う。視認性の良否を決定する最も主要な要因は対象と背景の明度差である。
視物質[しぶっしつ] 網膜の中にある色を感知して電気信号に変える物質を指し、錐体の中に赤、緑、青にそれぞれ感じる3種の視物質があり、桿体の中にロドプシンとよばれる明るさに反応する視物質がある。
主観色[しゅかんしょく]
subjective color
白と黒で描かれたベンハムの円盤を低速で回転したときに見える有彩色のことを主観色という。主観色現象の発生のメカニズムには複数の説がある。
主波長[しゅはちょう]
dominant wavelength
任意の色は一つのスペクトル色と白色光の混合によってつくることができる。その場合に使ったスペクトル色の波長をその色の主波長という。CIE色度図上に表わされた白色点とその色の点との延長上のスペクトル軌跡の波長を読むことによって主波長を知ることができ、その色の色相の見当をつけるために用いられる。延長線が純紫軌跡と交差する場合は補色主波長という。
照度
illuminance
照明されているある面の明るさを表す測光量で、単位はルクス。点光源からの光は距離の二乗に反比例して低下する。直射日光は10万lx、曇天の屋外が1~3万lx、満月で0.5lx、オフィスの机上面照度は750~1500lxが推奨されている。
小面積第3色覚異常 極端に小さな面積の青い色の点に対して感度が大幅に低下することが知られており、小面積第3色覚異常と呼ばれる。視角20分(明視の距離で1.7ミリ)以下の小さな青を目の中心部分で見ると青がみえにくくなり、この現象は青錐体が欠けた2色型の第3色覚異常と同じ見え方になるのでこのように呼ばれる。
条件等色[じょうけんとうしょく]
metamerism
分光分布の異なる2色が一定の照明条件等の下で等しい色に見える現象でメタメリズムとも言われる。照明条件を変えると、この2色は異なった色に見える。照明だけでなく見る人の色覚特性も条件の中に入る。 照明光や物体色の評価に用いられるが、工業製品のメタメリズムはカラーマッチング上のトラブルとなることが多い。
常用光源[じょうようこうげん] 測色用の標準の光はA、C、D65の3種類があり、補助標準の光にはB、D50、D55、D75の4種類があり、これらを近似的に実現した装置を標準光源、ランプを常用光源という。常用光源のうち日本で最も普及しているのがD50常用光源の蛍光灯である。
すい状体
cones
網膜中の二種の視細胞の一つで、明るい時に働き、色覚と視力に関わる。もう一方は明暗だけに感じるかん状体(桿体)である。すい状体(錐体)は、コーンの形をしていることから命名されており、赤・緑・青を感じる3種類の視物質があるとされている。網膜中には約600 万個のすい状体が中心くぼみとその周辺に分布している。
スペクトル
spectrum
光を分光した時に現われる単色光の連続した列を指す言葉。日光をプリズムで分光したときの虹の7色として知られる赤橙黄緑青藍菫がスペクトルである。他にスペクトル三刺激値(単色放射の三刺激値)やスペクトル軌跡などの言葉がある。
中心視[ちゅうしんし]
central vision
すい状体が密集していて、色の識別および視力の最も良い網膜上の中心くぼみで見ること。中心視に対して中心以外の周辺の視野で見ることを周辺視という。
等色[とうしょく]
color matching
二つの色が等しいと知覚すること、あるいは等しくなるように調節または調製することを指す。等色には分光分布が等しい完全な等色(アイソメリック・マッチング)と、分光分布は等しくないが三刺激値が等しい条件等色(メタメリック・マッチング)がある。
同化効果
assimilation effect
一つの色が他の色に囲まれているとき、囲まれた色に周囲の色が近づいて見える現象。反対の現象を対比効果という。同化現象は囲まれた色が小さい時や、周囲の色と類似している時などに起こり易い。
同時対比
simultaneous contrast
近接した二つの色を同時に見る時に起こる色の対比のこと。互に相手の色の反対側に見え方がシフトして対比が強くなる現象。一つの色が他の色に囲まれている時に囲まれた色が周囲の色からより遠い色として見える。時間的に近接して二つの色を順次に見ることを継時対比という。
白色光[はくしょくこう] 太陽の光のように複数の波長の異なる可視放射を含みながら白色である光を白色光という。可視波長域全域にわたって分光密度が一定である光を等エネルギー白色光といい、記号Eで表す。
薄明視[はくめいし]
mesopic vision
10~0.01ルックスの低照度の環境における色の見え方をいう。夕暮れ時や夜間照明下での見えがこれに当る。薄明視では、色を感じるすい状体と明暗を感じるかん状体が同時に働いているために、昼間の色の見え方とは異なる。青色系は明るく浮き出て見え、逆に赤色系は黒く沈んで見える。プルキニエ現象である。
標準光源[ひょうじゅんこうげん]
CIE standard source
CIE(国際照明委員会)標準の光を実現するためにCIEが仕様を規定した人工光源を指す。標準の光とは単に分光分布の数値データであり、標準光源とは区別して用いなければならない。標準の光D65には、その分光分布をもつ人工光源が無いことから標準光源はないが、代用するものとして高度の演色評価数をもつ特殊な蛍光灯やキセノン白色光源が用いられ、これらは常用光源D65等と呼ばれている。
標準イルミナント
CIE standard illuminants
CIEが規定した測色用光源の分光分布数値データ。標準イルミナントA、D65、その他の補助標準イルミナントD50、D55、D75等がある。標準イルミナントAは、相関色温度が2856kのタングステン電球の光、補助標準イルミナントCは可視波長域の平均的な昼光、標準イルミナントD65は紫外域を含む平均的な昼光、その他の補助標準イルミナントDは紫外域を含む種々の状態での昼光である。
表色系[ひょうしょくけい]
color system
色を心理的特性あるいは心理物理的特性に基づいて、特定の記号を用いて定量的に表わすシステムを表色系という。色票を伴わないもの、伴うものなど各種の表色系があるが、代表的なものとしてCIE表色系 (XYZ表色系)、マンセル表色系、NCS表色系等があげられる。
表面色[ひょうめんしょく]
surface color
物体色は更に光源色、表面色、空間色などに分類されるが、表面色とは光を反射する不透明物体の表面の色を指し、通常、色相・明度・彩度の三属性で表示される。
分光測色計[ぶんこうそくしょくけい]
spectrophotometer
分光光度計とも呼ばれ、反射光や透過光の波長ごと(スペクトルごと)の反射率や透過率を測定する計器である。380~780nm あるいは400~700nm の可視光の波長領域を細分して測定すると共に、三刺激値や、マンセル値あるいは色差計算などの計算・印字機能をもたせた分光光度計が普及している。測定された値は分光分布曲線としても出力できる。刺激値を直読する光電色彩計より応用範囲が広い。
分光測色方法[ぶんこうそくしょくほうほう]
spectrophotometric colorimetry
分光測色計を用いて、試料光の相対分光分布又は試料物体の分光(立体角)反射率を測定し、その値から計算によって三刺激値を求める方法。この方法に対し、刺激値直読型色彩計を用いる方法を刺激値直読方法という。
分光分布[ぶんこうぶんぷ]
spectral distribution
分光測色計によって測定された反射光や透過光の波長ごとの強度(反射率、透過率)の値。横軸に波長、縦軸に強度をとって表わしたグラフは分光分布曲線と呼ばれる。分光分布に等色関数を掛けて積分することによって三刺激値XYZが求められる。
ベゾルト・ブリュッケ現象 同じ波長の色でも明るさを変えると同じ色相に見えない現象で、不変色相と呼ばれる波長の色以外のすべての有彩色は、色光を明るくしていくと青あるいは黄みを増し、暗くしていくと緑あるいは赤みを増す現象である。不変色相は478nmの青、503nmの緑、572nmの黄、494nmの赤である。
ヘルソン・ジャッド効果
effect of Helson-Judd
灰色の背景の上に無彩色系列の色票を置き、赤や緑の有彩色の照明を当てると、背景より明るい無彩色は照明光の色相に、背景より暗い無彩色は照明光と補色の色相に見え、背景と同じ無彩色は灰色に知覚されるという現象である。
ヘルムホルツ・コールラウシュ効果
Helmholtz-Kohlrausch phenomenon
三刺激値のY(反射率)は明るさを表わし、Yが同じ値なら色相や彩度に関係なく同じ明るさの色として知覚される筈であるが、色相や彩度(色の純度)、視野の大きさ、輝度などによって左右され、特に純度の高い色光ほど明るく判定される現象である。
補色[ほしょく]
complementary color
加法混色あるいは減法混色により、二色の色を混色した場合に、灰色(無彩色)になるような関係の2色を補色関係という。印刷の3原色のシアン・マゼンタ・イエローの補色は色分解に用いるフィルタの色の 赤・緑・青である。補色残像、補色色相、補色配色、補色対比などと使われる。
マンセル表色系[まんせるひょうしょくけい]
Munsell color system
米国の画家で美術教師でもあったアルバート・H・マンセルが1905年に発表した色票集に基づき、米国光学会の測色委員会で尺度を修正した表色系である。色相・明度・彩度の三属性で表面色を表わすカラー・オーダー・システム。JISではこの表色系をJIS標準色票とし採用している。
無彩色[むさいしょく]
achromatic color
色相をもたない白、灰色、黒などを無彩色という。照度を上げていくと白や明るい灰色はより明るく見え、黒や暗い灰色はより暗く見えるが、中間の明度5の灰色は照度の変化に無関係にほぼ等しい灰色感覚を与える。この現象をスチーブン効果という。
明所視[めいしょし]
photopic vision
すい状体だけが働く数ルックス以上の明るい所では眼の状態は明順応状態にある。明順応するための必要時間は暗順応に較べると短時間である。明順応した視覚での見え方を明所視といい、物の色も形もはっきりと見える。0.01ルックス以下の状態は暗所視と呼ばれ、両者の中間を薄明視という。
明度[めいど]
value, lightness
物体表面の相対的な明暗の属性で、それを尺度化したものを明度という。一般にはマンセル明度のことを単に明度と言う。マンセル明度はマンセル色空間の中心軸で、最上部に明度10の白を、下に明度0の黒を置き、その間に知覚的に等歩度になるように各明るさの灰色を配置していく。有彩色の明るさもこのスケールに準じる。
有彩色[ゆうさいしょく]
chromatic color
色相をもつ色の総称。物体色を精密に測色すると殆んどの物体はわずかでも彩度を示す。